先生ありがとうございました

『母は木枯らしに誘われ西方に旅立ちました。』

今日、大学の恩師の逝去を知らせるはがきが届きました。
かなりショックだったです。
はがきは息子さんからです。

真っ白い紙にすっと一本だけ線を描くというのが先生の作品で、
その極限まで削ぎ落とされた美は学生だったわたしたちには非常に追うのが難しく、先生の課題はけっこう難儀であった記憶があります。

描いたところの美しさ、白いままの美しさ、はたぶんもうわたしが一生かかったってできないです。

作品と同じように先生は凛とした方で、長い黒髪をいつも頭の天辺にお団子にし、スモックのポケットに両手を突っ込んで背筋を伸ばし、コツコツと足音をたてて学生たちの間を巡る…そんな記憶があります。

わたしは卒業してからもずっと年賀状だけは出し続けていて、「あなたの描く漫画はうちの息子が毎年楽しみにしています」と返事をくださり、それからは息子さんのことを思い浮かべながら送っていました。
その彼からのはがきであったことも衝撃でありました。
在学当時はまだ4,5歳くらいであったと思います。
今はもちろん成人なさって、きっとご結婚もなさっていることでしょう。

木枯らしに誘われ旅立った、というのは先生らしい、と思いました。
先生はきっと究極の風という線をご覧になったのかもしれません。

先生、お世話になりました。
西の地で、安らかにお過ごしください。
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