マジックミラーの向こう側
その部屋に入ると窓がなかった。
いや、本当はあるにはあった。でも、その窓は建物の廊下に面していて、なおかつぴっちりと閉じられており、外の景色が見えるような窓はなかった。
部屋の中心に4人掛け用の応接セットが一組。壁に子供用の古い絵本がずらっと並んでいる。
部屋のドアの対面の壁にもうひとつドアがあって、どうやら直結してその向こうにもうひとつ部屋があるようだ。
ドアの上半分が擦りガラス貼りになっていて、ガラスの向こうが真っ暗なので、隣の部屋もやっぱり窓がなくて、なおかつ無人であるようだ。
「ここでお待ちくださいね。」
と、置き去りにされ、次に人が来るのは一時間後、というのが分かっていたので、ソファに座ってバックの中から文庫本を取り出す。
でも10分たってやっぱり顔をあげてしまった。
陰気過ぎる。
部屋が陰気過ぎる。
夏だというのに、外気を取り込むことのできない部屋。
エアコンもついていない。
なのに、どうしてこの部屋はこんなにうっすらと寒い?
天井を見上げると、蛍光灯が2本だけついていた。
隣の部屋に続くドアが左手側に見えていて、そうっとそちらに目を向けてみる。
やっぱり暗い。
耳を澄ませてみても物音ひとつしない。
そのドアの左横に目を向けて、そこに無造作に貼られた色画用紙を見た途端「うーん」と唸ってしまった。
色画用紙は鏡の上に貼られていた。
いや、本当はあるにはあった。でも、その窓は建物の廊下に面していて、なおかつぴっちりと閉じられており、外の景色が見えるような窓はなかった。
部屋の中心に4人掛け用の応接セットが一組。壁に子供用の古い絵本がずらっと並んでいる。
部屋のドアの対面の壁にもうひとつドアがあって、どうやら直結してその向こうにもうひとつ部屋があるようだ。
ドアの上半分が擦りガラス貼りになっていて、ガラスの向こうが真っ暗なので、隣の部屋もやっぱり窓がなくて、なおかつ無人であるようだ。
「ここでお待ちくださいね。」
と、置き去りにされ、次に人が来るのは一時間後、というのが分かっていたので、ソファに座ってバックの中から文庫本を取り出す。
でも10分たってやっぱり顔をあげてしまった。
陰気過ぎる。
部屋が陰気過ぎる。
夏だというのに、外気を取り込むことのできない部屋。
エアコンもついていない。
なのに、どうしてこの部屋はこんなにうっすらと寒い?
天井を見上げると、蛍光灯が2本だけついていた。
隣の部屋に続くドアが左手側に見えていて、そうっとそちらに目を向けてみる。
やっぱり暗い。
耳を澄ませてみても物音ひとつしない。
そのドアの左横に目を向けて、そこに無造作に貼られた色画用紙を見た途端「うーん」と唸ってしまった。
色画用紙は鏡の上に貼られていた。
この鏡はこの建物のほかの部屋にも必ずついている。
なんでこんなところに鏡が?というような場所についているというのが特徴で、ある部屋はわざわざ鏡の前に棚をつくってある。
棚の奥は別に鏡でなくったっていいんじゃない?という部分が鏡だったりする。
この部屋の鏡は色画用紙が貼ってある。鏡を隠すかのように。
なぜ。
鏡の異様さはこういうことだけじゃない。
普通の鏡ではないことは一目瞭然で、これはたぶんマジックミラーだと思う。
マジックミラーになっている鏡というのは、普通の鏡のように透明な感じがしないのだ。
自分を映してみても、全体がうっすらと暗い。
この部屋の怖いところは、位置的にこのマジックミラーの裏側は、あの、真っ暗で誰もいないとおぼしき隣の部屋だという点だった。
もっと嫌だったのは、この鏡が位置的にちょうど自分の左真横にあることだった。
画用紙が貼ってなければ、自分の姿が映りこむ位置だ。
画用紙が貼ってなければ。
誰もいない真っ暗な部屋。
もし、色画用紙で隠されていなかったら?
何となく視線を感じる、なんてことになるんじゃないだろうか。
誰もいないはずの部屋で誰かが自分をじっと見つめる視線を感じる…。
思いを振り払うように再び文庫本を開く。
折りしも、高校生数人が学校に閉じ込められてしまうというストーリーの本だった。
一時間後、
「お待たせしましたー!」
と、明るくドアが開いて思わず「うわー!」と叫びそうになった。
…なんていう体験をしてきたんですけどね。
ここはちゃんとした県の教育機関の建物です。
でも、古いので、もしかしたら昔は警察署とか鑑別所とか、そういうのだったかもしれないですね。
今度聞いてみよう。
なんでこんなところに鏡が?というような場所についているというのが特徴で、ある部屋はわざわざ鏡の前に棚をつくってある。
棚の奥は別に鏡でなくったっていいんじゃない?という部分が鏡だったりする。
この部屋の鏡は色画用紙が貼ってある。鏡を隠すかのように。
なぜ。
鏡の異様さはこういうことだけじゃない。
普通の鏡ではないことは一目瞭然で、これはたぶんマジックミラーだと思う。
マジックミラーになっている鏡というのは、普通の鏡のように透明な感じがしないのだ。
自分を映してみても、全体がうっすらと暗い。
この部屋の怖いところは、位置的にこのマジックミラーの裏側は、あの、真っ暗で誰もいないとおぼしき隣の部屋だという点だった。
もっと嫌だったのは、この鏡が位置的にちょうど自分の左真横にあることだった。
画用紙が貼ってなければ、自分の姿が映りこむ位置だ。
画用紙が貼ってなければ。
誰もいない真っ暗な部屋。
もし、色画用紙で隠されていなかったら?
何となく視線を感じる、なんてことになるんじゃないだろうか。
誰もいないはずの部屋で誰かが自分をじっと見つめる視線を感じる…。
思いを振り払うように再び文庫本を開く。
折りしも、高校生数人が学校に閉じ込められてしまうというストーリーの本だった。
一時間後、
「お待たせしましたー!」
と、明るくドアが開いて思わず「うわー!」と叫びそうになった。
…なんていう体験をしてきたんですけどね。
ここはちゃんとした県の教育機関の建物です。
でも、古いので、もしかしたら昔は警察署とか鑑別所とか、そういうのだったかもしれないですね。
今度聞いてみよう。
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