マジックミラーの向こう側

▶ in Diary posted Thu 06 Sep 2007 / 09:51

その部屋に入ると窓がなかった。
いや、本当はあるにはあった。でも、その窓は建物の廊下に面していて、なおかつぴっちりと閉じられており、外の景色が見えるような窓はなかった。
部屋の中心に4人掛け用の応接セットが一組。壁に子供用の古い絵本がずらっと並んでいる。
部屋のドアの対面の壁にもうひとつドアがあって、どうやら直結してその向こうにもうひとつ部屋があるようだ。
ドアの上半分が擦りガラス貼りになっていて、ガラスの向こうが真っ暗なので、隣の部屋もやっぱり窓がなくて、なおかつ無人であるようだ。
「ここでお待ちくださいね。」
と、置き去りにされ、次に人が来るのは一時間後、というのが分かっていたので、ソファに座ってバックの中から文庫本を取り出す。
でも10分たってやっぱり顔をあげてしまった。
陰気過ぎる。
部屋が陰気過ぎる。
夏だというのに、外気を取り込むことのできない部屋。
エアコンもついていない。
なのに、どうしてこの部屋はこんなにうっすらと寒い?
天井を見上げると、蛍光灯が2本だけついていた。
隣の部屋に続くドアが左手側に見えていて、そうっとそちらに目を向けてみる。
やっぱり暗い。
耳を澄ませてみても物音ひとつしない。
そのドアの左横に目を向けて、そこに無造作に貼られた色画用紙を見た途端「うーん」と唸ってしまった。
色画用紙は鏡の上に貼られていた。
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